キャンピングカーで『ひなんピング』医療的ケアが必要な子どもの避難支援ネットワーク構築をスタート
災害時の要支援者である「医療的ケアが必要な子ども」のいる家族の元へ、移動式避難所「キャンピングカー」を早期に届けるネットワークシステムを構築します。2021年4月より、岡山大学、キャンピングカー事業者、医師・看護師ネットワーク、当団体4者協働による、実証事業を開始いたします。
医療的ケアが必要な子どもの避難の現状
医ケア児の背景と現状
2021年6月11日に成立し、同年9月18日に施行された「医療的ケア児支援法」により、医療、福祉、保健、子育て、教育等の支援が各自治体の「努力義務」から「責務」と明記されました。保育所や学校などで医療的ケア児を受け入れるための支援体制が拡充されることとなります。 しかしながら、すでにワンストップの支援センターが設置された自治体もあれば、まだ構想もない自治体もあり、地域格差が大きいと推測されます。
医ケア児の避難の現状と課題
※医療的ケアが必要な子=新生児集中治療室(NICU)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童(18歳以上の高校生を含む)のこと。周産期先進医療の発展により医療的ケア児は増加傾向にあり、厚労省のまとめ(令和元年)では在宅で全国に推計約2万人いるとされる。
「在宅にて医療的ケアが必要な子ども(以下、医ケア児)」とその家族が災害時に避難する際には、多くの医療物や医療機器、生活必需品などが必要となります。
災害時の避難支援については、医療的ケア児支援法の「検討条項」に記されているものの具体策は明示されていません。
環境の変化に弱く、また免疫力が弱いため、避難所には、医療機器を動かすことができる電源、隔離された部屋、温度調整が可能な設備など、個々の事情に沿った設備や配慮が必要です。また、医ケア児にとって、新型コロナウィルスの感染は、命にかかわる脅威となります。
学校や公民館など、一般的な避難所では災害から逃れられたとしてもそこで過ごすことは困難であることが容易に推測されます。
西日本豪雨災害時には、
・要支援者のための公的避難所が機能しなかったこと
・当事者家族に有効で十分な情報がなかったこと
・災害は逃れたものの行き場所がなかったこと
・かかりつけの医師・看護師が同じ被災者であったこと
など、課題が浮き彫りになりました。
『ひなんピング』の概要
避難手段としてキャンピングカーを活用
避難手段・一時避難所としてとしてキャンピングカーを活用します。
①医ケア児家族からのSOSを受け、医療機器を動かす命綱である電源と衛生面・プライバシー確保可能なキャンピングカーとのマッチングシステムを構築します。事前に登録した「個別避難計画書」を医師・看護師ネットワークと連携することで、医療従事者のアシストを受けることも可能です。
医師・看護師ネットワークとの連携
被災地以外から支援に向かうために必要となるのが、要支援者の情報です。2014年の災害対策基本法改正により、各自治体には避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。
また、「個別避難計画書」の作成が進められています。しかし、医師会、看護協会等、各団体にて話し合いは進められてはいますが、実効性がないのが現状です。そこで、家族自身がWeb上で簡単に楽しく「個別避難計画書」を作成でき、それを災害時にはオンライン上で被災地外の医師・看護師へ共有するシステムを構築します。
楽しく避難訓練
日頃から自助の意識を持つことが重要です。個別避難計画書としても活用できるオリジナルシステム「イッツミー!」に登録し、防災キャンプイベント「ひなんピング」に参加することで、自助の重要性を知りながら、各家庭での避難シミュレーションをサポートします。
この事業は公益財団法人日本財団の助成を受け実施しています。