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2024/06/10 勉強会

【レポート】第2回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座

【レポート】第2回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座

2024年夏開催予定の医療的ケア児の避難訓練に向け、「サポートに入る支援者が正しい知識や共通認識をもつことが重要である」との考えにより実施中の医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座、第2回を実施いたしましたので、講座の様子をご紹介いたします。


夏開催予定の医療的ケア児の避難訓練の詳細や申し込み方法については、近日中に当ホームページにてお知らせいたします。
今しばらくお待ちください。



第1回目の講座レポートはこちらからご覧いただけます。【レポート】第1回目 避難訓練支援者養成講座(全5回)

開催概要

開催日:2024年6/3㈫ 14:30~

テーマ:避難生活と減災対策、地域コミュニティの重要性
(2018年7月岡山県真備町の水害現場を実際に支援した講師が、現場あるある、避難事情をお話しします)

対象者:・地域の防災担当者、市町村の防災担当者、防災などに興味をお持ちの方、災害時支援などお考えの方、支援者、医療関係者、当事者ご家族 etc…


講師:山中 弓子 氏

講師

親子支援 災害看護支援

第2回目から第5回目までの講師は、親子支援・災害看護支援*てとめっとの代表で、災害看護師をされている山中弓子氏です。

この日も、令和6年に起こった能登半島地震の災害現場、能登に災害支援に入っているため、支援中の能登からリモートで講師としてご参加くださいました。

2016年の熊本震災、2018年の岡山県真備町の西日本豪雨が起こった水害現場も実際に支援に入り、寝たきりの高齢者や医療的ケア児の対応も経験した上で、必要な支援・課題などを共有してくださいました。

当日の様子

講演の内容

第1回目同様スライドを用いながら、要項をかみ砕いて解説していく内容となりました。

実際に災害が起こった現場の様子や、当時の避難時の困りごとや状況を細かくスライドに落とし込んでくださっていて、情報量の多い回となりました。

講座の実施時間は80分弱、リアルタイムでの参加者は8名でした。

まずはじめに、ひなんピングスタッフよりご挨拶と支援者養成講座についての説明がありました。

支援者養成講座は医療的ケア児、その他支援が必要な方のため、そしてそのご家族の支援のために実施しています。

この講座をきっかけに「支援とは何か」について学んでいただければと開催しております。

最終ゴールは、支援者養成講座全5回終了後にひなんピングが構築している「イッツミー!」(医療的ケア児自己紹介カード兼避難計画書)に当事者の方に登録していただいて、地域連携を取りながら実際に避難訓練を実施(6/28㈮予定)するところまでです。

災害が起きたとき、日常で行っていたことができなくなります。「支援する人たちが環境を整えるサポートをすることが重要」になり、そうすることで、少しづつできることが増え、被災者が日常に戻れるサポートをすることが重要となります。

「1.真備で起きたこと」「2.避難方法と配慮が必要な方への対応」

要配慮者の身に起きたこと

実際起こった2件の事例をお話してくださいました。

1件目は医療的ケア児の母子の話、2件目は発達障がいの母子の話でした。

医療的ケア児の母子の話では、水害が起きた際、自宅からお母さんがひとりで医療的ケア児の娘さんを引きずりだし、命かながら家から抜け出し、車中泊で避難所に避難できたそうです。

幸いなことに前日に病院の受診があったこともあり、車内に娘さんに必要なケア用品が揃っていたため、娘さんのケアは問題なくできたそうです。

でも、お母さんの方が適切な支援を受けることができず、数日間は、たまたま車内に乗せていた飼い犬のドッグフードを食べながら過ごしていたそうです。

なぜかというと、医療職、福祉のチームも入っていた大きめの避難所ではありましたが、配布される食事を取りに行くにも2時間は並ぶ必要があり、その間、娘さんを車内に一人きりにはできない状態だったこと。

また、車中泊避難の場合プライバシーの問題から支援する側も立ち入りを控えていたこともあり、支援側もなかなかその現状に気づくことができなかったため、支援が遅れてしまったそうです。

医療、福祉チームなど、支援する側が早くから要支援者の情報を共有をし、連携をとって配慮、分担する必要があったという課題が浮き彫りになった事例でした。

また、日頃からのお付き合いのなかでいち早く支援に繋がることもあると思うので、地域の方たちとそういった関係性を築いていけることが理想的だというお話もありました。

避難所の場所がわからない

2件目の発達障がいの母子の話では、水害が起こったときにお母さんが相談員連絡を取りながら対応していたようですが、お母さんが「避難場所がわからない」と話していたそうで、結局その母と子は逃げ遅れてしまい、浸水していく家に取り残され亡くなってしまったそうです。

もう少し支援の連携が取れていたら、実際に自分たちで事前に避難場所の確認ができていたら…助かった命かもしれません。

この経験から真備の方たちのなかで「だれも取り残さない支援」を町全体で考えるようになっていったそうです。

また、人工呼吸器、酸素療法の医療的ケアがある場合、救済優先順位は酸素療法のある方で、更に酸素飽和度の低い方を優先して救助するそうです。

その理由としては、人工呼吸器はアンビューがあれば酸素を送ることができるけど、酸素療法の場合酸素ボンベの容量がなくなってしまったら対応できなくなるため、酸素飽和度の低い方を酸素が提供できる施設に送り届ける必要があるため優先して救助するそうです。

「3.避難方法と配慮が必要な方への対応」

避難所とは

避難場所についての細かな分類を学びました。
指定緊急避難場所は、対象とする災害に対して安全な構造である建物、または対象とする災害の危険が及ばない学校のグラウンドや駐車場のこと指します。

指定避難所は、屋根、壁があり雨宿りでき数日過ごせる場所のことを指します。

確実に安全を確保するためには、指定避難所を選んでください。

避難所の違い

また、災害の種類によって使える場所が限られているところもありますので、実際に足を運んで確認してみることをおすすめします。

避難所の選択肢

現在では指定避難所にもいろんな分類があるようで、小学校の体育館、病院、友達の家、親戚の家、商業施設、駅、銭湯、カラオケボックス、福祉施設、デイサービス、ショートステイ施設、公民館、神社など多岐に渡ります。

それぞれの場所、福祉避難所ごとに収容できる人数に限りがあること、福祉避難所などを避難場所として検討する場合には事前に福祉避難所と情報を取り交わしをしておく必要があるので、相談員、福祉支援員などと相談してみてください。

また、避難ルートの確認、施設の構造・駐車場などの確認、避難時の避難経路の共有(親戚などでもいいので連絡しておく)なども重要になってくるそうです。

その他、福祉避難所での対応、避難するタイミング、どこに避難するか、電源の確認、レスパイト(避難)入院、事前避難、「ぼうさいやどかり」、ひなんのピングの話もありました。

イッツミー

ひなんピングのスタッフより、ひなんピングが構築している「イッツミー!」(医療的ケア児自己紹介カード兼個別避難計画書)について話をさせていただきました。

パーソナルプランを作るには、地域の保健師、訪問看護、介護者、相談員などみんなで関わりながら作る必要があるため、なかなか難しいようで、そういった問題を解消するために「イッツミー!」(最終段階はアプリ化を計画)は開発されました。

事前にお子様についての情報(病気、必要なケア、学校、性格、必要な配慮、ケア用品、ケア機器、避難時に必要な用品など)を入力していただくことで災害時に医療従事者・支援者のスムーズなサポートを可能にします。

また、避難状況に応じて避難場所を登録できるようにもなっています。

イッツミーに登録していただければ、クラウド上でお子さんの必要な情報が共有できるようになります。

ご登録がまだの方はこちらからご登録できます。▷イッツミー!医療的ケア児自己紹介カード

インクルーシブ避難所

「3.インクルーシブ防災」

インクルーシブ避難所

インクルーシブ避難所は、みんなにやさしい避難所として、配慮が必要な方がいることを理解してもらい、避難所を管理される方にも共有して、必要な配慮に合わせた空間を設置されているようです。

発達障害で感覚過敏の子どもがたくさんの人の中で過ごさなければならないなど、実際の避難現場を目の当たりにした方たちが考え、障がいのある方も一緒に心地よく避難できるように「合理的配慮」を組み込んで、法律としても成立しています。

また、清潔の問題も浮き彫りになり、入浴に関しても自衛隊員とも掛け合って相談しながら個別に入浴できる事例も作れたそうです。事例がないこといは、なかなか厳しいところもありますが、相談しないことには変わらないので、まずは相談してみてください。

「5.看護と多職種との連携協働」

医療・福祉系の繋がりの図

実際に被災した時、日頃ケアに入っているところ(訪問看護など)が助けに行きたくても助けに行けない場合も出てきます。

そういったときに本当に大事になってくるのが地域におられる方、近くにいる人の支援が大切になってくるというお話がありました。

実際に配慮が必要な子どもたちのケアをするのは、日頃から関わっている家族になると思いますが、わたしたちでもできる支援として、きょうだいの面倒をみたり、荷物を運んだり、ほかにもできることがあるので積極的に支援に入ってみてください。

大切なのは「ご家族がどう過ごしたいか」をみんなで考えて寄り添った支援ができることです。

また、アクションカード、人工呼吸器の種類や説明、避難グッズ、電源の種類や確保、自宅内の安全確認、防災のおすすめの著書などの紹介もありました。

「地域コミュニティの重要性」

真備の方たちが被災したあと、実際に取り組まれたコミュニティ作りや対策を紹介してくださいました。

・訪問看護ステーションを中心にコミュニティ作り

・地域のサポーター作り、地域防災をいっしょに考える、サロン、茶話会など

・地域のお父さんと「防災BAR」としてお酒を飲みながらざっくばらんに防災について話したりしてコミュニティ作り

・実際に住んでいる要支援者家族から地域の方に向けたお話

・避難所を早く開けるなどして、早めに動ける対応をしてもらえる理解と環境作り

ぜひ、参考にしたいですね。

現状では、自分の地域に要避難者が住んでいることが分かりづらい現状があるので、そういったところがもっと共有できるように地域作りの一環としてこういった取り組みを積極的に組み込んで知っていくキッカケになればいいと思います。

参加者さんの声

最後に参加者さんからそれぞれ、レスパイト入院についての質問やケア用品についての質問などがありました。

事業所のスタッフさんが参加されていて、事業所には利用者さんが持ち込んだケア用品しかないのが不安だという声がありました。

これに関して、「災害時用に備蓄を置けるように予備をいただけないかと業者さんにお願いしてみてもいいかもしれませんね」という提案をくださいました。

そうやって、支援する側も「もしも」のときを想定して、お互いに協力していける体制が整っていくことが理想的ですね。

「イッツミー!」は他県も使えるのか?という質問がありましたが、もちろん岡山県外の方でも共通して使っていただける内容です。

イッツミーが実用化されると県内外で共有して使えるものになるので、ぜひ実用化してほしいと講師の山中氏からもおすすめしていただきました。

ひなんピングスタッフの想い

ひなんピングスタッフのほとんどは、医療的ケア児を知らないところからのスタートでした。

それまでは、医療的なケアが必要な子どもたちは病院で入院して過ごしていると思っていたのです。

でも、実際はそうではなく家族が訪問看護師などとケアをしながら自宅で過ごしていることを知りました。

そして、自宅に帰って生活しているのだとしたら、当然のように避難するときには誰かが助けてくれる仕組みがもうあるはずだと思っていました。

でも、実際はそういったものはなく、だれも助けてはくれないことを知りました。

そこで、ぱらママが運営しているレンタルキャンピングカーがなにか利用できないか?と、医療的ケア児の避難支援「ひなんピング」を思いつきました。

要支援者が他にもいる中で医療的ケア児にスポットを当てているのは、キャンピングカーには医療的ケア児が必要としている電源があるというところです。

地域の中に要支援者がいるかどうかわからないという声もきかれる今、まずは「ひとりでも多くの方に医療的ケア児の存在や現状を知ってもらう」ことが重要だと思っています。

わたしたちのように医療関係者でなければ、なんの専門的な資格を持っていなくても、直接的な支援でなくても関節的な支援として、お母さんや家族の支援ならできますよね。

そこで、まずは「医療的ケア児」を知ってもらい、どんな支援が必要なのか、ひとりひとり違う支援が必要になることなどを知ってもらい、要支援者が近所にいることに関心を持ってもらう目的もこの講座にはあります。

日頃関わっている訪問看護師自身が被災してしまったらなにもできなくなってしまいますよね。

だからこそ、身近に住む地域の方の支援が広がっていくことを望んでいます。

第3回目は大地震が起きた場合の、準備から3日間の避難生活について、人工呼吸器装着2歳児のケースを想定し講座を行います。

お申込みは随時受け付けておりますので下記よりお申込みください!

第1回目、第2回目を見逃した方もご安心ください!

第1回目「避難行動要支援者とは(在宅療養者や医ケア児の実際)」、第2回目の「避難生活と減災対策、地域コミュニティの重要性」(2018年7月岡山県真備町の水害現場を実際に支援した講師が、現場あるある、避難事情をお話しします)の講座動画は後日視聴可能です!

※ただし、限定公開のため指定のURLからでないと視聴できません。

ご興味のある方は、下記よりお申込みくださればご視聴可能です。
申込期間は終了しております。
お申込みいただきありがとうございました。

第2回目以降の講師のご紹介

山中 弓子 氏

所属:親子支援災害看護支援「てとめっと」代表
日本災害看護学会会員
青年海外協力協会(JOCA)災害支援チーム能登町ベースマネージャー
資格:看護師、防災士
日本セラピューティック・ケア協会認定セラピスト
国際リドルキッズ協会認定タッチケアセラピスト
(トラウマを受けた子どものためのタッチケア・NICUタッチケア・ベビーマッサージインストラクター他)

2018年に岡山県倉敷市の真備で起こった水害現場での支援活動の経験をもとに、避難の実態と避難時の注意点などについて教えていただける内容となっています。

あなたの想いが、誰かのためになる!

いっしょに支援者養成講座を受講して医療的ケア児のサポーターになりましょう!

支援者養成講座の詳しい日程や概要はこちらの記事をごらんください。

受講者募集!申込み・お問い合わせはこちらまで

受講希望の方はお電話または下記申し込みボタンをクリックして必要事項を入力後送信してください。
申込期間は終了しております。
お申込みいただきありがとうございました。

不明点などありましたら、お気軽にお問い合わせください。

お問合せ
086-238-8037(平日9:30~15:00)

主催 NPO法人輝くママ支援ネットワークぱらママ(https://paramama.jp/)

この事業は、ドコモ市民活動団体助成事業の助成を受けて運営しています。

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