災害時も安心!医療的ケア児のための避難訓練レポート【事前準備編】
2020年 コロナ禍が始まる少し前から様々なご縁が繋がりスタートした【ひなんピング】
始動時のメイン目的の1つであった「避難訓練」実施に向けて準備をしてきました。
災害が多いこの国において、いざという時の備えは医療的ケアが必要な子どもにとっては
命を守るために必要不可欠です。
しかしながら、その備えをする余裕もなく毎日を過ごしているご家族も少なくはありません。
したいのにできない。。。
そんな方々の一助に【ひなんピング】がなることが我々の目標です。
開催概要
開催日: 2024年9月26日㈭ 快晴
対象者:大石恵愛(えま)ちゃん 骨形成不全症 2型
大石さん一家
支援者:町内会防災会の皆様(町内会長・民生委員・愛育委員・体育委員)5名
地域担当の保健師
ぱらママスタッフ 3名
協力:指定避難場所の小学校
避難訓練当日を迎えるまで
支援者養成講座開講
発災時に、お母さんと医療的ケアが必要な子どもの2人だけが在宅だった場合を想像してみてください。
在宅での垂直避難が可能であれば、なんとかなるかもしれません。
しかし在宅避難ができなくなったら・・・?
指定避難場所への移動が必要になります。
医療的ケアが必要な子どもの避難は、身1つで逃げれば良いというものではありません。
必要な医療機器やそれに関連する用品など、代替がきかない、なくてはならないものが多くあります。
これらを全て持ち、医療的ケアが必要な子どもを抱えて逃げる。
お母さん1人では到底難しいことが容易に想像できます。
避難するためには地域の方々の手助けが必ず必要なのです。
また、地域の方々も医療的ケアが必要な子どもがいると分かってはいても、どのように声をかけたら良いか、何をしたら良いかなど分からないことが多々あると思います。
そこで、必要になるのが「知る」ということです。
ひなんピングは、その問題を解決するために「支援者養成講座」を開講しました。
モデル家族探し
避難訓練をするためには、その避難訓練の対象となる医療的ケアが必要な子どもとその家族の協力が必要不可欠です。
このモデル家族探しは本当に大変でした。
体調面であったり、ご家族の予定、そして最大のネックとなったのは、今回の避難訓練を記録として残し全国へと拡げる目的もあったために動画撮影と写真撮影が必要であり、更にそれらが誰でも見られるというものであるということ、つまり個人情報の考えから協力が難しいという結論になってしまい、なかなか協力してくださる家族を見つけることができませんでした。
発信するものに関しては細心の注意を払うことは大前提ではありますが、なかなか不安は拭えないのも事実です。
そんな中で、「ひなんピング」とご縁がありサイト内でブログも書いてくださっている大石さんご家族が、なんとかスケジュールを合わせて協力してくださり、今回、念願であった避難訓練を実施することができました。
イッツミーの活用
大石さんには、避難訓練をするにあたり、「ひなんピング」が作ったWEB上で管理することができる個別避難計画書「イッツミー」に避難場所、避難経路、お薬の種類、使っている医療機器の電力量や対象となる医療的ケアが必要な子どもに関する注意点など必要な情報を事前に入力していただきました。
その内容を参考にしながら、準備物や避難経路、避難先で把握しておくべきことを確認しながら避難訓練を実施しました。
この「イッツミー」は1度入力しておくと、紙とは違いお薬内容や病状などの内容変更が簡単にできることもメリットの1つです。
また、WEB上で管理しているため、発災時には本人やご家族の許可があれば、医療関係者がサポートするために必要な情報を閲覧することが可能であるため適切な処置を受けることができます。
地域の方々への協力要請
避難訓練を実施するにあたり、対象となる医療的ケアが必要な子どもとその家族とぱらママスタッフだけでの実施では不十分でした。なぜなら、発災時には、ぱらママスタッフが近くにいるわけではないので、ご家族は避難準備や経路、場所の確認は可能であっても、実際の状況に近い形での行動練習はできないからです。
そこで、なくてはならないもの!
それが住んでいる地域の方々の協力なのです!
今回は、大石さんご家族のご都合に合わせて日程が決まってから、まず大石さんにお願いをして町内会長につないでいただきました。
大石さんも今まで地域との関わりがそこまで深いものではなかったため、直接、町内会長をご存知ではなく、ご近所の方を通して連絡先をいただくことができました。
本来は、町内会長にひなんピングのことや、今回の避難訓練の意義などを直接お伺いをして話したいところではありましたが、実施予定日まで時間がなく、電話でご連絡をさせていただきました。
幸い、大石さんがお住まいの地域は防災意識が高く、町内会長に連絡してからすぐに防災会のメンバーへ避難訓練参加可否の確認をしていただき、こちらにも、避難訓練実施の依頼書作成の指示を迅速に出していただくことができました。
依頼書の作成
今回のことで地域の方々の協力のもと避難訓練を実施するには依頼書を作成して提出しなければならないことが分かりました。
依頼書作成にあたり、町内会長と何度もやりとりをして必要な文言や内容を確認いただきました。
また、依頼書の中に地域の保健師の確認が必要な内容があったため、えまちゃんを担当している保健師に連絡し、内容を確認、回答をいただきました。
そして避難訓練当日も支援者として参加いただけることになりました。
指定避難場所への協力依頼
今回の避難訓練の最終目的地である指定避難場所は小学校でした。
小学校へは町内会長が連絡をしてくださいました。避難訓練実施が平日午前中であったために校内への立ち入りは難しく、小学校の校門前までの移動を想定していましたが、小学校側から避難場所になる予定の教室の中まで入らせてもらえる許可をいただくことができました。
これは町内会のご協力がなければ不可能なことだったと思います。
今回、避難場所の様子を確認できたことは大石さんの不安解消につながりました。
まとめ
今回の避難訓練は「ひなんピング」として始動した当初からの大きな目標でした。
しかし、コロナ禍や、様々な事情からなかなか避難訓練の実施を実現することができず半ば諦めかけていました。
大石さん家族のご協力をいただくことができ、実際に実施が決まっても地域の方々がこんなに協力してくださるとは、正直、想像できませんでした。
しかし、実際に避難訓練を実施してみて、事前に発災時を想定して避難訓練を行うことの大切さや、地域の方々の存在やつながりのありがたさを改めて実感する素晴らしい機会となりました。
準備8割と言います。準備が大切。
この経験がこれから避難訓練実施を検討されている皆様のお役に立てれば幸いです。
次回の「当日打合せ・持ち出し準備編」では、医療的ケア児とそのご家族が、災害に備えるためにどのような準備をするべきか、また、避難時に支援者に依頼するサポート内容や、それを事前に伝えておく重要性について避難訓練で検証した結果をもとに詳しくお伝えします。
第一回目難訓練支援者養成講座の様子をまとめた記事もあわせてご覧ください。