ホンネ

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2022/07/27 井上つばき

第2章2-7②病院外で生活するために

第2章2-7②病院外で生活するために

たくさんの理解と援助と支えのなかで無事に小学6年生を卒業することができた椿。

中学生になっても「同年代の子と同じように普通の学校へ行きたい」という椿の気持ちを優先して学校を選びました。

無事学校が決まり新しい家族とともに再婚先へ転居して、治療を続けながら気持ちも新たに再スタート!

難治性腹水の治療法ステップアップ

難治性腹水の治療の一番の要となった「たまり続ける腹水の排液問題」

病院から飛び出して「普通の生活」を望んだ私たち家族のために、
当時の主治医が試行錯誤して考えてくれ、右の下腹部あたりに腹水を排液するためのドレーンを固定しての生活がスタートしました。

難治性腹水 在宅医療 医ケア児

◎腹腔ドレナージ固定

※これまでは腹水がたまったら、腹水を排液するための処置「腹腔穿刺」の度に大きな注射器を刺して抜いたり、
一時的にドレーンを挿入していました。

病院に来なくても自宅でも排液できるように…と、当時の主治医が考えてくださり、ドレーンを挿入したまま固定することに成功!

→自宅でも排液できるように!

ドレーンを挿入して固定したことにより、鎮静剤を使用する処置(腹腔穿刺)の回数が
週に1回から2週間に1回に減り、体への負担が減りました。

難治性腹水 在宅医療 医ケア児

排液をするために鎮静をかける必要もないので、
いつも処置の前に我慢していたご飯や水分も気にしなくてよくなったし、
半日以上眠ることもなくなりました。

座っていても排液することができるし、自由な時間が増え、良いことがたくさんありました。

この方法の一番の難点は、ドレーンを固定することがとても難しいということです。

簡単に抜けないように挿入部付近の管を5箇所、糸で縫ってとめていましたが長く長くは持ちませんでした。

先端部分を深く入れすぎると、先端がどこかに当たってしまい腹水が引けなかったり、
痛みで動けなくなる時もありました。

病院のベッドの上で安静にしている時とは違い、自宅で普通に生活をしていると本人が動くことで
ドレーンをとめている糸がすこしづつ取れていってしまうこともありました。

難治性腹水 在宅医療 医ケア児

長期的に異物を体内に入れていると感染問題もあります。

挿入部の清潔を保つ必要があり、鎮静をかけてのドレーンの入れ替え処置はだいたい2週間おきにありました。

ドレーンを入れたまま糸でとめているだけの生活なんて、痛そうですよね?

でも、痛がりの椿がよっぽどのこと(管の先が内部のどこかに当たって痛む、
掛けている糸を引っ張ってしまって皮膚が引っ張られて痛むなど)がない限り、
そんなに痛がらず普通に過ごせていたのが不思議なくらいでした。

ドレーンを入れたままの生活に慣れてくると、ドレーンが抜けてしまわないかと
こちらがヒヤヒヤしているのをよそ目に、当の本人はドレーンの挿入部付近をボリボリとかく余裕をみせていました。

この方法の1番の利点は、ドレーンを留置できるようになったことで、
病院に行かなくても本人の要望に合わせて自宅でも排液できるようになったことです。

自宅で行う医療的ケア

医療的ケアとして、ドレーン挿入部の清潔管理(週に2回抗菌ジェルシート交換)
と腹水の排液を自宅で行えるように母が看護師から学び、実行していきました。

ちなみにドレーンを留置してからの椿の入浴は、抗菌ジェルシート交換時に合わせて週に2回でした。

難治性腹水 在宅医療 医ケア児

腹水排液手順

①Cカニューラ(接続部品)とドレーンを繋ぎ先端をカット、ペットボトルに固定

②Cカニューラをアルコール消毒後、腹部から出ているドレーンの先端(Aプラグ)と繋ぐ

③クランプ(白い部分)を開放する→排液開始

④排液終了後クランプする(白い部分を閉める)

⑤Cカニューラと長い管を外す

⑥Cカニューラを消毒後、生理食塩水を付け一回引いてから5㎖押す

⑦AプラグからCカニューラを外しAプラグを消毒し終了

難治性腹水 在宅医療 医ケア児
使用していた医療用品(倉敷中央病院から処方)
難治性腹水 在宅医療 医ケア児

中学2年生になるころには椿が排液の手順を覚えて自分で排液ができるようになりました。

排液管理は本人と相談しながら「いいぐらい」に

ドレーン留置の排液管理は、基本的に椿の体調によりペース配分が決まります。

本人にしかわからないことなので、いつ排液するのかは椿と相談して決めます。

でも、早く抜きすぎてしまうと、腹水がたまる過程で身体に負担がかかるため、
ある程度椿が我慢できる「いいぐらい」で我慢する必要がありました。

難治性腹水 在宅医療 医ケア児

水分制限はこのとき、1日に飲んでいい量が1000ccでした。

それに対して排液は、4日に1回1500ccほどでした。

どうしてもほしくてがまんできないときの手段としては「氷を舐める」「うがいをする」でしたが、
氷を隠れて何個も食べたり、うがいをするふりをして飲み込んでしまったり、本人の意思なしではなかなか難しい問題でした。

中学校入学後にはその生活にも慣れてきて、「いつでも腹水を抜いてもらえる」という思考も加わって
隠れて飲む行為はエスカレートしていきました。

それに比例して、だんだんと椿が苦しくなってきて、排液して欲しいペースが早くなり、
2日に1回1700ccの排液ペースになっていきました。

【関連記事】

『病気と共に生きる』もくじ

1-1 椿の軌跡 

1-2 椿のカルテ

2-1 心臓病のお話

2-2 椿の病気発覚

2-3 椿の病気解説 

2-4 グレン手術と合併症

2-5 ①フォンタン手術と術前治療

      ②ペースメーカーのおはなし

      ③フォンタン手術後の生活

2-6 ①フォンタン術後症候群

      ②はじめての余命宣告

2-7 ①難治性腹水と腸閉塞と臍ヘルニア手術

      ②病院外で生活するために

      ③「チーム椿」の結成!

2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1

      ②発達障害発覚までの経緯-2

      ③発達障害発覚までの経緯-3

      ④発達障害発覚までの経緯-4

      ⑤発達障害と難治性腹水の治療の関係

2-9 ①発達障害とは?

      ②本人へ伝える

      ③発達障害の治療は支援?

      ④取り組んだこと

      ⑤時にはお互い休憩も大事

      ⑥もしわが子が発達障害かもしれないと思ったら…

      ⑦社会的支援について

2-10 ①命のカウントダウン

        ②余命宣告後の過ごし方

2-11 ①最期の14日間-1

        ②最期の14日間-2

        ③椿の生きた最期の1日

        ④椿、旅立ちの日