第3章3-3⑧医療との関わり
学校と病院と家族の想いと
小学6年生にあがった頃は命の危機から脱出したこともあり、週に1度の蛋白漏出性胃腸症(たんぱくろうしゅつせいいちょうしょう)の治療を続けながら地域の学校へ通っていました。
この頃から、年度はじめや年度終わりなどに、学校と病院とでカンファレンスを開いてくれるようになりました。
病状の確認と学校での困りごとを把握して、解決できるように椿が過ごしやすい環境を整えようという、病院側の計らいです。
なるべく学校に通いたいという本人と私の要望を叶えるため、病院の日以外はなるべく毎日通えるように小学校の先生に協力してもらいながら午前中だけ学校に行っていました。
校長先生、担任の先生、学年団の先生、保健室の先生、そして椿のお世話をこころよく引き受けてくれた、生徒たちの協力なくしては成り立ちませんでした。
病状が悪く、入院が長引くときもあり、そんな時はまた学校へ通えなくなりました。
短期入院での院内学級は利用できません。
最低1ヶ月の入院生活が確定している場合のみ申請が可能になるそうです。
入院することで学校という居場所から遠のいてしまい、本人がやる気になって継続していることがリセットされてしまうことが多くありました。
1日単位でも院内学級を利用できるようにするにはどこに掛け合えばいいのか、主治医が校長先生に聞いてくれたことがあります。
「医師としできることがあればどこへでも行きます!」と言ってくれた言葉は忘れません。
病院スタッフはいつでも患者の最善を考えてくれました。
結局、校長先生が市教委へ連絡してくれた結果は「決まりなので無理なようです」でした。
それでも、なんとか通院と学校を両立させながら無事に卒業式にも出席でき、みんなにまもられて楽しく過ごせた小学校生活は終わりました。
この頃は椿も生活リズムに慣れてきて、しんどいながらも「みんなと同じ様に生活したい」という意思がありました。
この頃、椿には中学校の進学先で3つの選択肢がありました。(のちほど『教育』の話で詳しくお話します)
病院の先生は「椿ちゃんがしたいようにしたらいいよ。」と言ってくださったこともあり、椿は自分の意思で、母(私)が再婚し引越しをした場合に通える中学校に進学することを決めました。
移住が新学期ぎりぎりになったこともあり、中学校入学前の学校と病院と家族でのカンファレンスは開かれませんでした。
父母と本人と教頭先生とだけで話をしての入学になりました。
この時、こちらの要望を書面で提示し、教頭先生は受け入れてくださいましたが「心臓病であっても中学校生活の決まりは守ってください」と言われているようなやり取りがあり、違和感を感じていました。
とりあえず通ってみないとお互いわからないことも多いと思い、そのままその学校へ進学しました。
心機一転、中学校生活がスタートしましたが、やはりはじめに感じていた違和感が表面化してきて、日が経つごとに少しずつズレが生じていきました。
病院側には、学校での様子もその都度相談するようにしていたので、小学校でもしたように中学校ともカンファレンスを開いてくれ、椿の病気の説明や今している治療の話をしてくださいました。
病院側は「椿ちゃんが学校で楽しく過ごせるように」「学校の先生の不安や負担が減るように」と話をしてくださいました。
でも、結局上辺ばかりのやり取りになり学校側からの具体的な困りごとはなかなか出てこないまま、こちらの生きづらさだけが浮き彫りになっていき、学校とのすれ違いは増えるいっぽうでした。
訪問診療と訪問看護と訪問薬局
椿が中学1年生のころ、腹水を抜くためのドレナージが腹部に固定されました。
これにより、自宅でもできる治療が増えたことと、病院への通院の回数を減らす目的で、今後自宅でも治療が受けられる様に2020年10月から訪問診療・訪問看護・訪問薬局の介入が開始されました。
訪問診療(在宅医療)とは、通院が困難な患者様の自宅に医師が定期的に診療に訪問し、計画的に治療・看護・健康管理等を行うものです。定期訪問に加え、緊急時には必要に応じて臨時往診や入院先の手配なども行います。
訪問診療の目的は病気の治療だけではありません。転倒や寝たきりの予防、肺炎や褥瘡(床ずれ)などの予防、 栄養状態の管理など、予測されるリスクを回避し入院が必要な状態を未然に防ぐことも重要な役割です。
一般社団法人 訪問診療ネットワーク / 訪問診療とは
訪問診療の主な利用者:通院が少し難しいと思う方、入院ではなく自宅で医療を受けたい方、退院後も自宅で医療管理が必要な方、身体機能が低下された方、慢性的な痛みに悩まされている方、在宅ホスピスケアを希望される方
訪問診療を利用するメリット:通院の軽減・地域に基づいた医療体制により365日24時間対応
訪問看護とは、看護師がお宅に訪問して、その方の病気や障がいに応じた看護を行うことです。健康状態の悪化防止や回復に向けてお手伝いします。主治医の指示を受け病院と同じような医療処置も行います。自宅で最期を迎えたいという希望に沿った看護も行います。
主な看護内容:健康状態の観察、病状悪化の防止・回復、療養生活の相談とアドバイス、リハビリテーション、点滴、注射などの医療処置、痛みの軽減や服薬管理、緊急時の対応、主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携などです。
訪問薬局とは、在宅での療養を行っている患者さんで通院が困難な方に対して、処方医の指示に基づき、作成した薬学的な管理計画に基づき患者さんのお宅を訪問して、薬歴管理、服薬指導、服薬支援、薬剤の服薬状況・保管状況及び残薬の有無の確認などを行い、訪問結果を処方医に報告するところまでを含む業務をいいます。
【参考】公益社団法人東京都薬剤医師会HP
訪問部門それぞれの役割り
病院に行けば、先生がいて診察を受けて、先生や看護師が治療をしてくれて、お薬をもらって帰りますよね。
訪問部門はそれぞれの役割りごとに分かれていて、診察の先生、看護をしてくれる看護師、お薬を出してくれる薬局がそれぞれお家に来てくれるようになります。
訪問診療は、先生が家に来てくれて受けられる診察で、症状の確認、必要なお薬の処方、予防接種などもしてもらえます。
椿は主に先生とのおしゃべりを楽しんでいました。
訪問看護は、看護師が家に来て受けられる看護で、お風呂のお手伝い、医療的ケアなどをしてくれます。
その子によってしてもらえることは違ってくるのでいろんなケアが考えられると思います。
訪問薬局は、訪問診療の先生が処方してくれたお薬を薬剤師が自宅まで届けてくれます。
訪問診療と訪問薬局が連携を取ってくれるので、こちらは何もすることもなく、家で待っていたら届けてくれます。
訪問部門が介入してくれたことにより、それまで倉敷中央病院まで行かないとしてもらえなかったことが、自宅でもできるようになり、それまで毎週通っていた通院回数を2週間に1回に減らすことができました。
自宅で受けられる訪問医療の介入により、わたしたちの生活は大きく変わりました。
【関連記事】
2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1
2-9 ①発達障害とは?
2-10 ①命のカウントダウン
2-11 ①最期の14日間-1
3-1 ①病気と共にある生活とは
3-2 ①闘病と家族の在り方
3-3 ①医療との関わり
続きはこちらから