第3章3-3⑯医療との関わり
共有できる電子カルテ導入への希望
わたしが医療に関して不便に感じたのは「何度も同じことを説明しなければならない」ということです。
何度も移住を繰り返したわたしたちは、移住先で心臓病以外の病気の診察を受ける内科・耳鼻科・歯科・皮膚科等に通うとき、毎回椿の病状をくわしく説明する必要がありました。
自分で書類を作成して通院したい病院の先生に渡したりもしました。
かかりつけの倉敷中央病院で紹介状を書いてもらえることを知ったのも遅かったですが、紹介状を書いてもらうにしてもお金がかかることです。
訪問医療を利用したときも、主治医と訪問診療の先生と訪問看護師と学校の先生に対して何度も同じことを説明しなければならず、混乱することもありました。
地域医療で登録すれば閲覧できる電子カルテがあると聞きましたが、医療者にしか共有されません。
そういう便利なものがあるのであれば、もっと幅広く共有できて、患者家族、相談支援員、学校関係者など、子どもに関わるみんなが閲覧できたり、その日の子どもの症状や通院予定や治療内容を書き込めたりする様式の電子カルテが理想的だと考えます。
電子カルテの内容は、県をまたいで全国どこにいても共有できるものがいいと思います。
患者家族と登録した各医療者と役所関係、学校関係も共有して閲覧できるものがいいと思います。
個人情報にはなりますが、患者や患者家族としては、共通して共有できる医療データはあった方が便利だと思います。
これは、災害のときにも便利なツールになると思います。
なにかあった時に助けてもらえる術になるのであれば、情報共有はされていた方がお互いに助かることが多いと思います。
いつかそういったものができて、医療がもっと患者も患者家族も、医療従事者も、それをとりまく関係者、地域の方も含め、身近で利用しやすいものになっていってほしいと願います。
地域医療のこれから
今回、椿が訪問医療を選択できたのは、倉敷中央病院の主治医の勧めがあったからでした。
患者がどういったシステムを利用できるかということも、教えていただかなければ知らないままのことも多いです。
もちろん、知ったうえで選ぶ選ばないは、その家族の自由です。
自宅に他人を入れるのがいやだ、面倒だ、という意見を聞くこともあります。
それぞれ生活スタイルや、性格もあるので、訪問医療が絶対に良い!とは一概に言えませんが、医療の進歩により救われる命が増えたり、薬剤などの進歩により、入院しなくても通院でこと足りることも増えてきているように感じます。
そんな世の中の流れからも、「自宅で過ごす」という選択が今後増えてきて、そっちが優先になってくる生活も考えられると思います。
地域医療のあり方が変わっていく時代になってきているのではないかと感じます。
訪問診療、訪問看護、訪問薬局、訪問介助、訪問リハビリ…きっといろんな訪問医療のスタイルがありますが、まだわたしはすべては知りません。
でも、もしかしたらこの先、身近なだれかや自分自身、いつかだれかが、そういうものをまた利用することになるかもしれません。
なので、これからのためにも、先に知ることができるものは知っておきたいと思うのです。
そういった職業があり、取り組まれている方がおられるということも知りたいし、みなさんにも知ってほしいと思うのです。
実際、わたしたちが訪問医療を利用してみて感じたのは、訪問医療を利用できることは、子どもにとっても家族にとってもさまざまな面でとても助けになっていくことは間違いないということです。
わたしが聞いた限りでは、今この辺りでは訪問診療、訪問看護の利用患者は高齢者がほとんどで、小児の利用者は少数だそうです。
でも、実際は利用できたほうがいい患者はたくさんいると思います。
病院に行かなくても、自宅にいて診察を受けられるようになれば、身のまわりの困りごとが相談しやすくなったり、日々の生活がもっとスムーズになっていくと思います。
預け先や学校問題なども一緒に考えやすくなるのではないかと思います。
学校に介入してもらえる医療従事者がいるというのは、子どもも家族も教員もとても安心で助かるのではないでしょうか。
大きな病院と地域の医療が連携を取れるようになり、福祉や教育の連携もスムーズになって、地域の方も加われるようになれば、みんなの安心がより深いものになっていくと期待します。
昨今ではコロナ患者が急増したことにより、訪問医療が注目されはじめ関心が高まっているように見受けられます。
岡山でも訪問診療、訪問医療への需要が増えてきている印象です。
椿が旅立った後、椿を受け持ってくださった訪問診療と倉敷中央病院がこれからの医療の発展に向けて、椿と医療の関わりをもとに地域の医療関係者や病院内に向けて講義を開かれたそうです。
講義を終えたあとのみなさんの感想は「感動した」「自分もこういう関わりをしたい」と感銘のお声をたくさんいただいたと報告を受けました。
地域医療の進展に微力ながら貢献できたことを、母として誇りに思います。
大きな病院だけでなく、地域と関連した医療連携、訪問医療の活躍に期待しています。
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3-2 ①闘病と家族の在り方
3-3 ①医療との関わり
⑯医療との関わり
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