ホンネ

ホンネ
2022/05/03 井上つばき

はじめに

はじめに

2021年2月4日 享年14歳にして生涯を終えた娘が難病と共に生き抜いた人生をもとにこの冊子を贈ります。

娘 椿は14年間、自分が抱えた病気と共に立派に人生を生き抜きました。

― 望んで病気を持って産まれたわけじゃない ―

だけど、生きるためにたくさんの治療と手術を乗り越えなければなりませんでした。

だから、生きるためにたくさんの困難を乗り越えてきました。

病気と家族と友達と自分の未来…成長していくにつれ変化していく心と身体と環境に戸惑いながら14歳まで生きてきた時間の中で、思春期をむかえた娘の心の中はきっと目まぐるしく忙しかったことでしょう。でも14歳という年齢だからこそ感じることのできた苦しみと幸せがあったのだろうと想像します。

本当は生きている間に「病気でも頑張って生きているよ!一緒にがんばろう!」と、娘なりに想いを共有しようと、自分で開設したYou Tubeチャンネルに「自分のドキュメンタリー」を投稿していくつもりでした。
だけど、ちょっと時間が足りませんでした。
一旦作った動画は作り直すため削除してしまったようでスマホには残っていませんでした。
今では母だけが知る幻の動画となってしまいました。

だからこそ、「伝えよう」としていた娘の想いを知る私が少しでも「娘の想いをつなげたい」と思ったのです。

何も知らず無知のまま生きていた私は、娘がお腹に宿り、母親になりました。
娘が誕生し「難病と共に生きていく人生」を知りました。
娘はちゃんと幸せを感じてくれているだろうかと、母である私は問い続けながら闘病する娘のとなりで過ごしてきました。

娘が亡くなるその日まで「娘のために」と思い、精一杯向き合ってやってきたつもりでしたが、娘の本意はまた違うものだったのかもしれません。
そして未熟だった私が娘と共に闘ってきた「娘の人生」そのものが私に向けた「人生をかけた授業」だったのではないかと、娘を失って気がつきました。

娘がいなくなってしまったから「終わり」ではなく、私たちが娘と過ごしてきた日々の中で感じた「子どもが闘病するということ」やその家族のあり方、闘病生活にともなって生じた「生きづらさ」を知ってもらうことで、この先の未来に「こうあってほしい」「こうあるべき」という導きにつながるのではないかと感じました。

そうすることで、娘がたどってきた軌跡が「娘の生きた証」として意味を持って「伝わり」、「つながっていく」キッカケになるのではないかと思いこの冊子を作ることにしました。

世の中にはいろんな人がいて、幸せのカタチも十人十色。

家族のあり方もさまざま。
だからこそ求められる柔軟性。多様化していく家族のあり方や世の中にまだ知られていない病気を共有し、進歩していく医療と共に、どんな悩みや病気を抱えていても当事者や家族が選ぶことができる、柔軟に対応できる社会の仕組みを求めたく、ここに声をあげます。

障がいと闘う人たちが仲間はずれになる世の中ではなく、障がいと闘う人たちが中心にいることができる世の中であってほしい。

英語で障がい者のことをChallenged personと表現するように、障がいを抱えて生きることは可哀相なことではなく「障がいと共に生きるという困難に立ち向かい挑戦しながら生きていてカッコイイ、素晴らしい」と認めてもらえる存在だと思います。

『多様性を認め自由な心を持って共に生きられる社会』であってほしいと願います。

自分と同じように病気を抱えてがんばっている子どもたちの幸せを願いながら、懸命に生きようとしていた娘の想いが、この先を生きる難病・障がいと闘う子どもたちとその家族にエールとして届きますように…

※ご注意!※
個人の見解によるものであること、15年前からの話になるので現在では変わってきていることをご了承の上、お読みください。

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