第2章2-4グレン手術と合併症
初手術を終えて一緒に過ごせるようになったものの、
病状は安定せず・・・
増える病名、段階をおってする手術・・・
椿の病気との闘いははじまったばかり!
グレン手術+房室弁形成術までの記録を説明します。
酸素飽和度低下と頻脈とグレン手術
初めての手術を終えた生後1ヶ月ごろから、2週間に1回の外来受診をしながら自宅で過ごしました。
生後2ヶ月ごろにチアノーゼがひどくなり酸素飽和濃度(SpO2)が低下し60%台になったため在宅酸素療法の開始。
術後の水分制限は徐々に解除され、ミルクをたくさん飲めるようになり
体重も増えスクスク育ちましたが、気の抜けない状態で過ごしました。
生後4ヶ月頃、自宅で頻拍(ひんぱく)になり呼吸困難を起こし救急車で運ばれ、そのまま緊急入院。
まだ身体が小さく予定している手術が受けられないため、手術可能になるまで2週間ほどICUで鎮静をかけ眠って過ごしました。
そして、2回目の手術をする運びになりました。
椿の病気 カルテ02
〇酸素飽和度の低下
単心室症、肺静脈狭窄症などにより血液循環が悪く、血液中の酸素濃度が下がる
※椿の平均酸素飽和度 60~80%台 (正常99-96%)
治療法:酸素吸入によって酸素不足による身体機能の低下を改善します。
→生後2ヶ月から在宅酸素療法の開始
〇頻拍(ひんぱく)
頻拍は不整脈の一種で心拍数が毎分120回以上になるもの(正常な心拍数は毎分60~100回)
ほぼ常に動悸や心不全(息切れ・胸の不快感・失神など)の症状がみられる
※椿は毎分250回
治療法:内服薬で頻脈を抑える
→ペースメーカーで脈拍数が下がりすぎるのを防ぐ
通常とは異なる椿の心臓の形、単心室症の場合、段階的に手術をする必要があります。
生後4ヶ月以降にグレン手術、3歳頃にフォンタン手術と段階を経てしていきます。
椿は頻拍(ひんぱく)の症状がひどく出てしまったため、発作が起きないよう鎮静(ちんせい)をかけ、
しばらく眠らせた状態で手術に備えました。
2017.2.28 岡山大学病院にて2度目の手術を受ける
★両方向性グレン手術
→上大静脈を心房から切り離して肺動脈と繋ぐ手術
★房室弁形成術
→弁狭窄の解消
岡山大学病院にてグレン手術を受け手術は成功しましたが術後合併症で苦しみ、
生後5ヶ月~1歳2ヶ月頃まで乳糜胸(にゅうびきょう)と闘いました。
〇乳糜胸(にゅうびきょう)
胸管から漏出した乳び(腸管からの脂肪球を含むリンパ球)が胸腔内(肺)に貯留した状態「胸水貯留(きょうすいちょりゅう)」。
治療法1:水分制限・食事制限(脂肪の摂取を控える)
→低多重のためMCTミルク飲用(MCTミルク…中鎖脂肪酸が多く含まれるミルク)
治療法2:胸腔穿刺(きょうくうせんし)→肺と胸壁の間「胸腔(きょうくう)」からカニューレまたは針を刺し溜まった乳びを排液する
体重からわかる乳び胸の試練
グレン手術と房室弁形成術後、合併症で乳び胸を発症しました。
その治療で乳びが溜まらないように脂肪と水分をしぼるため、水分制限・食事制限がはじまりました。
水分の制限がきつく、1日に飲んで良い量は500㏄ほどでした。3時間おきに50㏄ずつ小分に飲んでしのぎました。
生後4ヶ月には5000gまで増えた体重は、乳び胸が長引いた影響で激減し3800gまで落ちました。
育ち盛りのこの時期にお腹が空いて眠れないことも多く、昼夜問わずお腹を空かせて泣くことがほとんどでした。
口からおしゃぶりが離せなくなり、抱っこも多くなりました。
加えて、胸水貯留の治療で胸腔穿刺(きょうくうせんし)をし、
脇腹からカニューレをさして溜まった乳びを排液(はいえき)しますが、
このカニューレの先端が体内のどこかに当たることで痛がったり、挿入部が感染の原因になって熱が出ることもありました。
カニューレがつながったままの状態で抱っこするのも一苦労で、本当に過酷な日々でした。
このころが一番入院と退院が目まぐるしく、家で過ごすよりも病院で過ごす時間の方が多かった時期です。
病棟での入院生活は基本的に母である私が24時間付き添いをし、週末に父親が見舞いに来る生活でした。
治療は辛かったですが、入院生活に慣れてくると良いこともありました。
椿は毎日たくさんの人に関わってもらえたことでたくさんの愛情を受けることができました。
人見知りがなかったので毎日変わる担当の看護師とのやりとりも新鮮でした。
また、母親が他界していた私は身近に育児の相談者がいなかったため、
入院中に看護師が一緒に育児をしてくれる環境がすごく有難く、心強かったです。
ー椿の成長のスピードー
首すわり:4ヶ月頃
寝返り:10ヶ月頃
歯が生えた:10ヶ月
おすわり:11ヶ月頃
つかまり立ち:1歳3ヶ月
在宅酸素療法について
当時、椿には酸素が必須アイテムでどこに行くにも酸素と一緒でした。
家でもお風呂以外は在宅酸素の機械と繋がれ、チューブが伸びる限られた行動範囲で過ごしていました。
外出時も酸素ボンベを持ち出し、ベビーカーの下のネットにボンベを乗せて移動していましたが、
幼児の荷物一式(哺乳瓶・熱湯の入った水筒・おむつ・おしりふき・着替えセットなど)に加え3㎏もあるボンベの持ち運びで
ベビーカーがひっくり返ることもしばしば…。
【在宅酸素の機械】
倉敷中央病院の紹介で帝人(テイジン)のものをリース契約して、初期は1-3L流量可能の機械(ハイサンソ3R)、
最終的に5L流量可能の機械(ハイサンソⅰ)を使用していました。
移動のときは酸素ボンベとボンベ用のカバンと専用キャリーやリュックを貸し出ししてくれます。
移動時の酸素ボンベは2Lの容量で、1(L/分)流量で平均6時間ほど継続使用できます。
重さは3kgほどです。定期的に点検に来てくれるので、メンテナンスはテイジンにおまかせでした。
酸素濃縮装置ハイサンソ3Rの画像は帝人ファーマ株式会社から引用
https://www.teijin-pharma.co.jp/healthcare/treat_zaitaku/user_guide/hi-3r/
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2-4 グレン手術と合併症
2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1
2-9 ①発達障害とは?
2-10 ①命のカウントダウン
2-11 ①最期の14日間-1