第2章2-6 ①フォンタン術後症候群
ここからはフォンタン術後症候群との闘いのはじまり。
椿を苦しめた病気です。
根本治療のない予後不良の疾患です。
フォンタン術後症候群の発症
小学3年生の終わりごろから、風邪のような症状でしんどくなることが増えました。
咳が続いたり、熱が出たりする症状が1週間おきくらいのスパンで起きるようになりました。
かかりつけの倉敷中央病院の月に1回の外来で主治医にも相談していました。
症状がひどいわけではなかったので、近所のかかりつけの小児科で症状に合わせて、
風邪の対応と同じように点滴治療や内服薬を出してもらい様子をみていました。
それと同時期に体つきのことについても主治医に相談していました。
このころの椿は手足は細いのに腹部だけがぽっこりしているような体型でした。
よく食べていたのでそんなことはないとわかりつつも「少し栄養失調なのでしょうか?」と尋ねました。
これに関しては、身長が当時113cmと年齢(9-10歳=平均身長130.5-136.3㎝)にしては低かったこともあり、
骨の成長の検査をすることになりました。
骨の成長の検査は手のレントゲンを撮り、手の骨の成長具合で判断するそうです。
結果、椿の手の骨年齢は8歳くらいで、ぽっこりお腹は体の成長過程という見解になりました。
その後、夏休みに両親の事情で離婚し、一時的におじいちゃんの家(私の実家)に引っ越すことになりました。
学校については椿と相談し、おじいちゃんの家の近くの小学校(私の母校)に9月から転校することになりました。
このころから咳き込んだときに血痰(血混じりの粘液状の痰)が出るようになりました。
そのこともふまえて、カテーテル検査をすることになりました。
カテーテル検査の結果で全身状態が悪く慢性心不全、血痰が出る鋳型気管支炎、
体型、血液データから蛋白漏出性胃腸症と診断を受けました。
椿の11歳のお誕生日前日2012年10月6日、フォンタン術後症候群であることが確定しました。
椿の病気 カルテ04
◎フォンタン術後症候群
フォンタン術後、主に遠隔期に、不整脈、チアノーゼ、血栓塞栓症、蛋白漏出性胃腸症、
心不全、肺高血圧、肝硬変、肝がん、腎不全など全身の臓器不全をきたす症候群。
〇慢性心不全
心臓は1年におよそ1億回、体の隅々に血液を送り出すポンプの仕事をしています。
このポンプが、脳・腎臓・肝臓等の臓器に十分な血液や栄養を送ることができなくなる状況が「心不全」です。
治療法:内服薬で心臓の動きを助ける
〇鋳型気管支炎【椿はII型鋳型気管支炎】
(Ⅰ型鋳型気管支炎はインフルエンザ関連で発症)
鋳型気管支炎は、気道内の鋳型粘液栓により呼吸症状をきたす疾患。
心臓手術後(フォンタンなど)にリンパ流のうっ滞を起こすために粘液産生が増加し、
粘液栓が形成されるタイプの鋳型気管支炎。発症後致命的。
治療法:気管支鏡による粘液栓除去
→椿は咳などをして自力で排出できていたので痰切りの内服薬とネブライザー(吸入)で様子見
〇蛋白漏出性胃腸症
血液中に存在するタンパク質(特に分子量の小さいアルブミンやIgG)が消化管内腔へと失われてしまい、
低タンパク血症に関連したさまざまな症状が現れるようになる一種の症候群。
漏れ出る箇所は様々で、症状としては胸水、腹水、浮腫、下痢などとして発生します。
椿は腹水として発症→難治性腹水・・・体内から漏れ出した液体が腹部に貯留
蛋白漏出性胃腸症の治療法:不足した成分を点滴で補充する・内服薬・食事療法
●不足した成分を点滴で補充→アルブミン・免疫グロブリン(IgG)・輸血
難治性腹水の治療法:腹腔穿刺によりたまった腹水(腹水貯留)を排液する
●腹腔穿刺→注射針の長いものを刺し、たまった腹水を排液する
●ドレナージ→管を刺したまま固定し継続的にたまった腹水を排液する
◎2019年8月~開始された治療内容
腹腔穿刺・アルブミン5%補充開始(点滴投与)・免疫グロブリン補充開始(点滴投与)
◆それまで飲んでいた内服薬
・フロセミド・・・利尿薬
・アルダクトンA・・・利尿薬
・エナラプリルマレイン酸塩・・・血管を広げ血圧を下げる
・タンボコール・・・脈の乱れを整える
・グルコンサンK・・・不足したカリウムを補充
・ワーファリン・・・血液を固まりにくくする
・チラーヂンS・・・甲状腺ホルモン剤
・アミオダロン・・・脈の乱れを整える
・ピモベンダン・・・不整脈の症状改善
◆新たに追加された内服薬
・アドシルカ・・・肺の血管を広げ血圧を下げる
・サムスカ・・・利尿薬
難治性腹水との闘いのはじまり
蛋白漏出性胃腸症の診断を受けた10ヶ月後…少しずつ肥大していった椿の腹部。
少しずつ腹水がたまってきたことにより、本人の体のしんどさの訴えとして、
頭痛・吐き気・腹部の痛みなども増えてきて、さらにお腹が重たくなり、かがむのがしんどかったり、
下が見えづらくなってきたり、生活に支障が出てきたため難治性腹水の治療を開始する運びになりました。
ここから辛く厳しい難病との闘いがはじまっていきました。
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