ホンネ

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2023/08/18 井上つばき

第3章3-5⑥教育との関わり

第3章3-5⑥教育との関わり

地域の普通学校

そして3つ目の地域の中学校。

当時住んでいた病院の近くの地域の学校と、再婚した場合に住むことになる地域の学校の2校とも見学に行きました。

家族の考えとしては、椿がどちらを選んでも対応できるように考えていました。

椿は「できれば今の小学校の友達と一緒の学校に行きたい」と、言っていたのですが、その地域の中学校に実際見学に行ってみると、学校の作りと仕組みが椿にはしんどいものだと判りました。

校舎が傾斜に斜めに建てられているため、階段での移動が多いということ、大学のように各授業ごとに生徒が教科担任のいる教室へ移動する方式でした。

できるだけ移動を最小限にしたい椿にとっては大問題でした。

そして、もうひとつの再婚先の地域の学校は、築6年ほどの真新しい校舎でエレベーターが完備されていました。

小中一体型校舎で小中一貫教育に取り組んでいる学校でした。

小規模校で、来年度の新中学1年生の生徒数が21人×2クラスで、目が行き届きやすい印象を受けました。

きれいな校舎と穏やかな雰囲気を感じました。

椿の中で一番の決め手はエレベーターがあるということで、見学に行った日に迷わず「ここに通いたい!」と決めました。

椿の意思を尊重して決めた進学する中学校。

わたしは自信を持って岡山市の市教委に相談に行きました。

倉敷市の市教委からは早島支援学校を勧められたけれど、いろんな事情がありながらもこの学校に通いたいという意向を伝えにいき、市教委もいっしょに来ていた椿にも聞き取りをし、椿の意思を尊重してくれました。

窓口になっていた教頭先生にも、病気などの事情を説明し理解していただき、この中学校へ通うことを決めました。

岡山市の教育委員会へも直接お伺いし、椿と二人で事情を話し「地域の学校に通いたい」という思いを伝えると応援してくださいました。

学校が決まったことで再婚、引っ越しが確定しました。

医療的ケア児 ひなんピング
小学校の卒業式

予後が悪いと言っても、必ずしも何年後には死ぬ病気だと言われたわけではありませんでしたし、本人も家族も関わってくれる医療従事者の方々も希望を持って病気と闘っていました。

いろんな希望を胸に持って、椿自身が自分でこの中学校を選んだのです。

病気でも自立できる環境とは?

医療的ケア児 ひなんピング

そもそもこんなにしんどい思いをしているのに、学校に行く必要があるの?と思う人もいると思います。

たとえ病気でたくさんがんばっていたとしても、椿も中学1年生になる12歳の女の子です。

病気があってもなくても、みんな等しく教育を受けることができます。

医療的ケア児 ひなんピング

椿が院内学級に通って得た心の栄養は「生きるエネルギー」だと感じました。

学校は等身大の同級生と共に過ごしながら「目標」や「希望」を持って、ときに悩みながらもいろんなことを共有して一緒に成長しながらたくさんのことを学べる大切な居場所だと思います。

それに、子どもが教育から離れるということは、さまざまなことに影響してくると、わたしは椿と生活しているなかで思うところがありました。

一概には言えませんが、社会から離れるということは、自立を遅らせることに多少影響するのではないかと感じました。

自立するためにも、1日のなかの少しの時間でも親元を離れ、学校社会へ飛び出して、いろんなひとと関わりながらコミュニケーションを図り、人間関係を築き、学んでいくことできる大切な時間(チャンス)だと思います。

椿の場合、入院生活も多く学校に通う機会が少なかったこともあり、ひととの関りも人任せにし、自分でこなしていかなければならない問題から逃げるような姿勢を取ることが多くありました。

病気のことで、入院、自宅休養になり突然学校に行けなくなってしまうことで、学校で学べるはずの「継続すること・挑戦すること」が中途半端になってしまうことが多くありました。

そのためなかなか成功体験に結びつかないことが多くありました。

反対にあきらめたり「どうせ」という言葉が出たりするようになってしまったのは、リセットされてしまった経験が多かったせいで、自信が失われてしまっていたのでしょう。

学校の先生の大半は「無理しなくていいからね」と椿に優しく声かけをしてくださいました。

それはとてもありがたいことなのですが、意欲的ではない子どもからしたら「無理しなくていいからね」=「しなくていい」になります。

そうするとサボることを自然と覚えてしまうのです。

「椿ちゃんは病気でがんばっているから」と、まわりの子と違う対応をされることに椿自身の理解と認識がだんだん歪んでいきました。

「病気だからしなくていい」=「楽しても許される」という考えになって、自分のことも他人事のように人任せにしていたように見受けられます。

こういった問題は個人差があるものなので、椿を見て感じた見解ですが…。

そういった経緯もあり、母親であるわたしは椿の将来を心配して自立心や自尊心を育てたいと思うようになり、中学生になったら「できなくても挑戦する」ということを、椿に望むようになりました。

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『病気と共に生きる』もくじ

1-1 椿の軌跡 

1-2 椿のカルテ

2-1 心臓病のお話

2-2 椿の病気発覚

2-3 椿の病気解説 

2-4 グレン手術と合併症

2-5 ①フォンタン手術と術前治療

      ②ペースメーカーのおはなし

      ③フォンタン手術後の生活

2-6 ①フォンタン術後症候群

      ②はじめての余命宣告

2-7 ①難治性腹水と腸閉塞と臍ヘルニア手術

      ②病院外で生活するために

      ③「チーム椿」の結成!

2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1

      ②発達障害発覚までの経緯-2

      ③発達障害発覚までの経緯-3

      ④発達障害発覚までの経緯-4

      ⑤発達障害と難治性腹水の治療の関係

2-9 ①発達障害とは?

      ②本人へ伝える

      ③発達障害の治療は支援?

      ④取り組んだこと

      ⑤時にはお互い休憩も大事

      ⑥もしわが子が発達障害かもしれないと思ったら…

      ⑦社会的支援について

2-10 ①命のカウントダウン

        ②余命宣告後の過ごし方

2-11 ①最期の14日間-1

        ②最期の14日間-2

        ③椿の生きた最期の1日

        ④椿、旅立ちの日

3-1 ①病気と共にある生活とは

  ②病気と共にある生活とは

  ③病気と共にある生活とは

  ④病気と共にある生活とは

  ⑤病気と共にある生活とは

3-2 ①闘病と家族の在り方

  ②闘病と家族の在り方

  ③闘病と家族の在り方

  ④闘病と家族の在り方

3-3 ①医療との関わり

  ②医療との関わり

  ③医療との関わり

  ④医療との関わり

  ⑤医療との関わり

  ⑥医療との関わり

  ⑦医療との関わり

  ⑧医療との関わり

  ⑨医療との関わり

  ⑩医療との関わり

  ⑪医療との関わり

  ⑫医療との関わり

  ⑬医療との関わり

  ⑭医療との関わり

  ⑮医療との関わり

3-4 ①社会との関わり

  ②社会との関わり

  ③社会との関わり

  ④社会との関わり

3-5 ①教育との関わり

  ②教育との関わり

  ③教育との関わり

  ④教育との関わり

  ⑤教育との関わり

  ⑥教育との関わり

  ⑦教育との関わり

  ⑧教育との関わり

  ⑨教育との関わり

  ⑩教育との関わり

  ⑪教育との関わり

  ⑫教育との関わり

  ⑬教育との関わり

  ⑭教育との関わり

  ⑮教育との関わり

  ⑯教育との関わり

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