第3章3-5⑪教育との関わり
学校とトラブル発生 2020/10/12
ウソ
行き渋りがありながらもなんとか学校に通えていたころ、椿を迎えに行った際に学年主任から話がありました。
椿が英語の課題について先生にウソをついていたことが積み重なって問題になっていました。
夏休みの課題のワークができていない生徒は、できるまで居残りをしてワークをするように指示があったそうです。
椿は全部できないだろうからと、先生が椿に寄り添って、無理じゃない程度にどこまでならがんばれるかを椿といっしょに話し合って範囲を決めて提出日も決めていたそうです。
けれど、指定していた日になっても持ってこず、居残りの日にも「訪問診療があるから」と帰ってしまって参加せず、翌日も先生は椿が自分で言いに来るのを待っていたのに何も言って来ないのでしびれを切らして「どうなってる?」と聞いてみたそうです。
すると「忘れた」と言ったそうです。
「忘れたのなら忘れたで、その事実を自分で先生に言いに来なさい」という話をしたそうです。
こういうことがあったので、忘れ物をして怒られるということを減らすためにも家庭の方でも課題を持ってくるように声掛けをしてほしいという話でした。
でも、この日椿はワークを持ってきているはずでした。
わたしは先生の前で「持ってきてるよね?せっかく昨日してたのになんで出さないの?」と椿に聞きました。
それを聞いていた先生は「持ってきていない」と言っていたのに「実は持ってきていたこと」に怒りはじめました。
それと、さきほどの話にあった「訪問診療があるから」と辞退した放課後の居残りについても「訪問診療は今週はなかった」という話を正直にしたことで、更に怒らせてしまいました。
ここで先生に本当のことを言わずにやり過ごしてしまっては『隠し通せた』という成功体験を作ってしまうことになると判断したわたしは、先生と椿と正直に話し合う覚悟で事実を打ち明けたのです。
椿にとっては辛い時間だけど、ウソをついてしまったことは良くないことです。
先生に謝罪をしなければいけないとわかっていても、椿からなかなか「ごめんなさい」を言い出せないことに先生もいらだっていました。
なんとかその流れを無事に終え、ウソをついてしまったことをリセットして仕切り直しです。
ここまできてやっと、椿の『真相心理』を先生と一緒に紐解いていく作業に移りました。
深層心理【認知行動療法】
椿の意見はこうでした。
「初日はしていなかったから言えなかった。
次の日は居残りしたくなかったからウソをついて帰った。
今日は先生と約束していた範囲までできていなかったから「できていない」と思って出せなかったから忘れたことにした。」
言えなかった。
出せなかった。
出さなかった。
ウソをつく。
隠した。
どれも二次障害の傾向でした。
本来の問題から逃げてすり替えてしまっているのです。
先生が寄り添って考えてしてくださったことはよくわかりました。
でも、椿は逃げてしまった。
なぜか…。
それは先生と決めた範囲が課題として「椿には難しかった」からです。
この時の決め方では、本人が決めたのではなく先生が決めたことになります。
椿にとっては「ここまでができる範囲」ではなくて「ここまできると言っておいた方がいい範囲」だったのでしょう。
先生や親からしたら「やろうと思えばできる範囲」だから大丈夫だろう、とその課題に設定しますが、本人は「しんどい」と感じても変に空気を読もうとして約束や課題を自分のできる許容範囲を越えた設定にしてしまい、その課題をこなせなくて怒られたくなくて隠してしまうのです。
二次障害の克服には『成功体験』や『自己肯定感』が必要です。
課題は本人が無理なくできるものにして、成功体験を積み上げていくことが大切です。
この一連の流れから、先生も椿の状態がなんとなく理解できたようで「こういった行き違いを減らすために、これからはもっと学校と家族が連絡を取って情報共有をしましょう」という話になりました。
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