第2章2-3椿の病気解説
生後8日目に発覚した先天性心疾患の事実。
はじめて聞く病名を聞き取ることもできず、落ち着いた頃に診断書を見返して自分で調べ直したけど理解できず、
先生におまかせするしかなかったあの頃。
ずっと付き合っていかなきゃいけない病気について知ることは家族にとって大切なこと。
椿の病気 カルテ01
◎無脾症候群(むひしょうこうぐん)【指定難病】
生まれつき脾臓(ひぞう)がない病気です。
脾臓は血液中の古くなった赤血球を壊すはたらきをしています。
また、身体の中に入ってきた病原菌や細菌などとたたかう抗体を作ったり、
新しい血液を溜めたりするはたらきをしています。
脾臓(ひぞう)がないことで感染症にかかったとき、重症化しやすく重篤(じゅうとく)になるリスクが高まります。
脾臓(ひぞう)が無い場合、 先天性心疾患を合併することが多く、その上、内臓が左右対称的となることが多いとされています。
先に先天性疾患は100人に1人と示しましたが、無脾症候群はその先天性心疾患の約0.9%といわれています。
①単心室症「右室単心室症」【指定難病】
単心室症は、4つある心臓の部屋のうち、左心室と右心室の区別がなく、心室が1つになっている病気です。
国内では、15万人に1人の割合で発症するとされています。
全身から戻ってくる酸素濃度の低い血液(静脈血)と、肺から戻ってくる酸素濃度の高い血液(動脈血)が一つの心室で混ざるため、
生まれた直後から皮膚や唇が青紫色になるチアノーゼがみられます。
心臓が右室だけでできている場合を「右室型単心室」といいます。
1つの心室を2つの心室に分割することは通常困難なため、機能的根治手術フォンタン型手術といって、
静脈血の戻る血管(上大静脈・下大静脈)を心臓から切り離して肺動脈に直接流れるようにつなぎ、
心臓には肺からの動脈血だけが戻るようにして、静脈血と動脈血が混ざらないようにする手術を目標に治療を進めます。
②総肺静脈狭窄症(そうはいじょうみゃくきょうさくしょう)
心臓の右心室から肺動脈にかけて狭窄(きょうさく)があることで血流が悪くなる疾患。
カテーテル治療(バルーン拡大術またはステント拡大術)か外科手術で治療を行うが予後不良とされています。
③総肺動脈還流異常症(そうはいどうみゃくかんりゅういじょうしょう)
すべての肺静脈が左心房には還らずに、上大静脈、門脈、右心房など体静脈に還流している先天性心疾患。
多くの場合新生児、乳児期、早期からチアノ-ゼ、心不全をきたします。
肺静脈が体静脈に合流する部位が狭くなっているものはより重症で早期の外科治療が必要です。
※椿が生後8日で呼吸不全になったのは総肺動脈還流異常症が原因
2018.10.15 岡山大学病院にて初めての手術を受ける
★総肺静脈還流異常症手術
→肺静脈と心房を繋ぐ手術
岡大CCUから倉中NICUにて看護を受け1ヶ月で退院!
術後1週間は岡山大学病院のCCU(冠動脈疾患治療部)で過ごし、経過良好なため倉敷中央病院に転院しNICU(新生児集中治療室)に入りました。
本来なら家族一緒に過ごせるはずの時間は、限られた面会時間内しか一緒に過ごすことができず、椿は小さなベッドの上で看護師にお世話をしてもらい過ごしました。
回復するにつれ、おむつを替えたり、抱っこをしたり、ミルクをあげたり、自分の手でしてあげられることが増えていきました。その度に自分がこの子の母親であることを実感することができて、すごく嬉しかったです。
そして手術から1ヶ月後、無事に自宅に帰ることが出来ました。
先天性疾患の早期発見が可能に
近年では、先天性心疾患を胎児のうちに超音波検査(エコー)で発見することができるようになりました。
早ければ20週(5ヶ月)ほどで心臓が小さく見えるころから発見されます。
多くは7~8ヶ月になり、胎児の心臓がある程度成長したところで、その大きさや構造をエコーで診断します。
これですべてが発見できるわけではありませんが(70~90%は確認できます)、
胎児のうちに心臓の異常を発見できれば、生まれる前から生後の対策を練ることができ、
早期に適切な治療ができることから、かなり重症の疾患でも治療・救命できるようになりました。
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2-2 椿の病気発覚
2-3 椿の病気解説
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2-9 ①発達障害とは?
2-10 ①命のカウントダウン
2-11 ①最期の14日間-1